تسجيل الدخول土曜日、部活を終え家に帰ってきた。
お兄ちゃんは今日、グループで買い物に行ってる。 お父さんが起きて部屋から出てきた。「おかえり、柚希。友也は……今日いないのか」
「うん。そうみたいだね」 「そうか。最近のあいつは変わったな」 「うん」お父さんもさすがに気になってきたのかな?
これがきっかけで仲直りしてくれたら……。その後お母さんも帰宅し、三人でリビングでくつろぐ。
しばらくすると、お兄ちゃんが帰ってきたようだ。 家族がリビングに集合している時は相変わらず部屋まで一直線だ。「全く、顔くらい出せと言うのに」
「でも、最近の友也は年頃の子みたいになってきたわね。えーっと、何ていうのかしら……りあじゅう?」お母さんも変化に反応した。
外見や雰囲気からでもいい。 少しずつ戻ってくれたら嬉しい。 夕食時にはお兄ちゃんも加わった。 でも相変わらず食後はすぐに部屋に戻る。 学校とは違い家の中での事は、少し時間がかかりそうだ。ところで買い物はどうだったのだろう。
特訓の成果は出たのかな? 気になったので自室に戻りLINEを送った。「今日の、成果を、楽しみに、してるよ……っと」
妙にワクワクしながら返事を待つ。
すると早速返信が来た。〈明日、新島から買い物に誘われたんだが着ていく服が無い〉
はぁ? 何それ。
私に返事をするよりも前に新島先輩の名前を出してくるとは思わなかったので、少し不機嫌になる。 それにしてもデートか……。 新島先輩がこんなに早くオトしにくるとは思わなかった。 なんか横槍入れられた気分。 とりあえずお兄ちゃんに詳しく問いただしてみよう。 そう思い、お兄ちゃんの部屋をノックする。コンコンッ
反応が無い。コンコンッ コンコンッ
と再びノックした。 「もう! 早く開けてよね」と文句を言いながら部屋に入る。
お兄ちゃんは慌ててドアを閉めて尋ねる。「大丈夫なのかよ?」
「大丈夫でしょ、最近のお兄ちゃんは変わったなとか言ってたし」「今日も帰って来たお兄ちゃん見てリア充みたいって言ってたから、今までみたいな事にはならないと思うよ」
「そ、そうか。これで母さん達に心配かける事もないな」ホッと胸をなでおろすお兄ちゃん。
自分の事よりも他人の事を心配するなんてお兄ちゃんらしい。 家族なんだからそこまで気にしなくてもいいのに。 「それよりも! 明日デートに誘われたの?」 「デートなのかなぁ。買い物に付き合ってって言われただけだし」 「世間ではそれをデートって呼ぶの!」ましてや女性からの誘いなんてデート中のデートだと思うでしょ普通!
一瞬イライラしてしまったがこのままではまずいと思い気を取り直す。 まぁ、こうしてお兄ちゃんから頼られるのも満更でもないし。 今持ってる服を出してもらう。「持ってる服全部見せて」
まずはタンスから服を出しベッドに並べてもらう。
「う~ん、今の季節だと……」
並べられた洋服を見渡し、いくつかの組み合わせを思い描いていく。
「よし! インナーはこのTシャツでアウターにこれを着ればいい感じになると思う」
「本当か!」 「私を信じなさい!」 「明日は俺は何をすればいいんだ?」 「そこなんだよね~。お兄ちゃんが上手く立ち回れるとは思えないし、それに……」 「それに?」 「新島先輩の事だからただのデートとは思えないかな」新島先輩は、お兄ちゃんをリア充にする計画に協力すると言った。
その上で私も先輩とお兄ちゃんをくっつける事を約束した。 デートだなんて急ぐ必要は無いはずだ。 何か裏があるのかもしれない。 「あとは単純にお兄ちゃんを落としに来てるとか、かな」 「はぁ? あいつが興味あるのは学校一のリア充に成った時の俺じゃないのか?」 「自分に惚れさせれば色々楽に動かせるって感じなのかも」それを聞くとお兄ちゃんはハッ! とした顔をし訝しげに尋ねてくる。
「まさかとは思うけど柚希もその方法使ってたりするのか?」
「そんな事しないよ。でも勝手に相手が好きになるのはしょうがないよね」当然! といったように返したがお兄ちゃんは苦笑いをしていた。
その後、お兄ちゃんにデートで使えるお店を教えて自分の部屋に戻ってきた。
ベッドに横になり思考を巡らせる。 新島先輩はどういう意図でお兄ちゃんをデートに誘ったのだろう。しばらく考えたが答えが出ない。
気にしてもしょうがないのでここは素直にお兄ちゃんを応援しよう。「頑張れ、お兄ちゃん……」
次の日、お兄ちゃんは新島先輩とのデートに出かけた。
私は部活も無いので、めぐと久しぶりにショッピングをしている。 色々な店を回り、パンケーキを食べながら一息吐いていると、不意にめぐが「あのさ、話したい事があるんだけど……」
と真剣な顔で言ってきた。
「ん? なぁに?」
「実は私……友也さんに告白しようと思ってるの」 「そっか、本気なんだね」 「うん」中学の頃から比較的受け身だっためぐがこんな決意をするなんて。
それほどまでにお兄ちゃんが魅力的になっているのか。 それとも、この間の田村の一件がそうさせたのか……。 「ゆずはどう思う?」 「なにが?」 「だって私……友達のお兄さんに告白しようとしてるんだよ?」 「そんなの関係ないよ! 私はめぐを応援するよ!」 「ありがとう、ゆず」私がめぐを応援したい気持ちは本当だ。
当初の計画ではめぐがお兄ちゃんの恋人候補でもあったし。 だけど今は……。 ショッピングから帰ってきてしばらくすると、お兄ちゃんが帰ってきた。 予定ではディナーを済ませてくる筈なのに、今はまだ5時過ぎだ。 二階に上がってきたところを強引に引っ張り自分の部屋に連れ込む。「何かあったの? こんなに早く帰ってきて。 それになんだかボーッとしてるし」
「いや、ちょっとビックリする事があって……」今日のデートを一部始終話してもらった。
新島先輩は終始、2人きりにも拘らず猫を被ったような雰囲気だったらしい。 しまいにはじっと見てきたり下の名前で呼んでほしいと言ったり。「う~ん、あの新島先輩が……」
さすがの私も言葉に詰まる。
思った以上に先輩は惚れてるっぽい。「もしかしたら、今日の新島先輩が本当の素なのかもしれない」
「素? 素はこの間みたいな冷たい感じじゃないのか? 常に注目を浴びる為に努力しまくる自己顕示欲と承認欲求の塊の」 「それも素だと思う」 「ん? つまりどういう事だ?」 「覚えてない? お兄ちゃんが学校一のリア充になったら付き合ってあげるって言ってたでしょ」 「言ってたな」 「それに、新島先輩から言われたのはそれだけじゃないんじゃない?」 「『ちゃんと好きになってあげる。皆から羨ましがられるようなカップルになるの』と言われたよ」 「やっぱり」 「やっぱりって?」 「新島先輩はお兄ちゃんの事が好きになってきてるの」 「はぁ! いや、ありえないだろ。 それにまだ学校一のリア充とは程遠いぞ」 「お兄ちゃんは知らないかもだけど、一年生の間だとお兄ちゃん中居先輩より人気あるんだよ?」先日の田村の件もあって、『2年の中居先輩はコワイ』というイメージが余計に広まった。
抑止力になったけど、ちょっとだけ申し訳ない気持ちになる。「それでも、新島が俺を好きになるのは早いんじゃないか?」
「恐らくだけど、一年生や二年生からの人気を知って焦ったのかも」 「焦る?」 「いつ誰がお兄ちゃんに告白するか分からないから、今の内から親密になっておこうって思ったのかも」 「それで俺の事が好きっていうのは違くないか?」 「そうでもないの。女は嫉妬深いんだよ?」田村の一件の時にめぐの気持ちを新島先輩は知ってしまった。
それもあって焦って行動に移したのかもしれない。 「それがどうかしたか?」 「どうして新島先輩はお兄ちゃんに水瀬先輩を口説く様な内容のメッセージを送らせたと思う?」 「俺への嫌がらせじゃないのか?」 「どうして下の名前で呼ばれてると思う?」 「なんでだろうな」『さっきから柚希は何が言いたいのかさっぱり分からない』
そう言いたげな表情をしていた。「お兄ちゃんの事が好きだからだよ」
「なら聞くけどいつから俺の事を好きになったんだ?」 「私の知ってる限りだと初めてあった時からお兄ちゃんの事が好きなんじゃないかって思ってた」 「初めてっていうのは新島の家に行った時からか」 「ううん、私が部活見学に行った時からだね。お兄ちゃんの事色々聞かれたし」頭の整理が追い付かないらしく、お兄ちゃんは頭を抱えて唸り出した。
「新島先輩は独占欲も強いんだと思う。だから嫉妬したのかもしれないね」 「じゃあ俺を脅したのは」 「自分以外の女に靡かない様にだね」 「ならなんで水瀬にあんなメッセージを送らせたんだ」 「自分の持ってる物を褒められたら嬉しいでしょ? それと同じ感覚なのかも」|奇《く》しくも私と新島先輩はよく似ている。
だからこそ先輩の気持ちは自分の事の様に分かる。「独占欲が強すぎるんだね。だから歪んだ行動に出ちゃう」
「でも今日のデートでわかったでしょ? ホントは乙女なんだよ」その言葉を聞いてお兄ちゃんはハッとした表情をした。思い当たる節があるようだ。
「だから、嫌わないであげてね」
そう言って私は、半ば無理矢理会議を終わらせた。
夕食を終え、シャワーを浴び、部屋に戻った私は明かりも点けずにベッドに倒れ込んだ。 月明りだけが照らす天井をぼーっと見つめる。新島先輩は今までの自分を変えてまでお兄ちゃんにアプローチをかけた。
それくらい本気なんだ。 ただ同じ女として、ただ純粋に新島先輩を応援したいと思ってる自分がいる。だけど……。
「めぐも水瀬先輩も、新島先輩も……お兄ちゃんの事、好きなんだ……」
お兄ちゃんを本気で好きになる女性がいることに戸惑いを感じている自分もいた。
冷静に考えを纏めることもおぼつかない。 嫉妬にも似た感情を落ち着かせるように、私は眠りについた。お兄ちゃんが私のことをずっと好きだった……? にわかには信じられない言葉を聞いて混乱する。「だから柚希のことを気持ち悪いだなんて思わないし、俺のことが好きだと言ってくれて嬉しい」 真っ直ぐ、視線を外さずに言葉を浴びせてくる。 私のことを好きだと言ってくれて凄く嬉しい! だけど、それをどこまで信じていいか疑っている自分もいる。 そんな自分が嫌だとわかりつつも、私の口は勝手に動いていた。「新島先輩は? お兄ちゃんの初恋は新島先輩だったって言ってたよね」 そう問いかけると、お兄ちゃんは困った様に頭を掻きながら答える。「確かに楓は俺の初恋の女の子だ。でもそれは柚希以外での事なんだ」「私以外で?」 首を傾げる私にお兄ちゃんは説明を始めた。「ああ。さっきも言った通り、小さい頃から柚希の事を一人の女の子として好きだった。だけどそれは歳を重ねていく内に許されない恋なんだと知った。だから柚希以外の子を好きになろうと思った。けど、その時の俺は周りから孤立していたし、どこかで無理かもなって思いもあった」 孤立してしまった原因を作ってしまったのは私の所為だし、あの一件で余計にお兄ちゃんの事が好きになったんだっけ。「そんな時、一人の女の子が俺に話しかけてくれた。周りからボッチだのヲタクだの言われてる俺に対して優しく接してくれた。その当時の俺は自ら人を避けていたけど、その女の子と話している間の空間は凄く居心地がよかったんだ。そういう事も重なって俺は始めて柚希以外の女の子を好きになった」 そう語ってくれたお兄ちゃんに対して、私は更に意地悪な質問をする。「水瀬先輩の好意や、友華さんと沙月ちゃんに対してはどうなの?」「こんな俺に好意を寄せてくれるのは凄く嬉しかったし、俺自身みんなに惹かれていってた」 そして深く息を吐き、申し訳無さそうな顔をする。「だから皆とは付き合えないと伝える決意をするのに時間が掛かっちゃって申し訳ないと思ってる」 そう
私は今何て言った? 部屋の前で盗み聞きをして、沙月ちゃんとお兄ちゃんがそういう会話が聞こえてきて……無意識に部屋に飛び込んだ。 その後に沙月ちゃんと口論になって……それから――――『お兄ちゃんの事が好きなんだから!!』 そうだ……お兄ちゃんを盗られたくない一心で――――「柚希……今のって」 お兄ちゃんは状況が理解出来ないといった感じで見つめている。 それもそうだ。突然妹からあんな事言われたら混乱するに決まってる。「やったね柚希ちゃん。やっと言えたじゃん!」 沙月ちゃんが嗜虐的な笑みを浮かべながら私の肩をポンッと叩く。 ハメられた! きっと私が部屋の外で話を聞いてると踏んで沙月ちゃんは最初からこうなる様にお兄ちゃんに色仕掛けしてたんだ! 「っ!」「柚希ちゃん!」「ちょ、待てよ!」 どうしよう! どうしよう! どうしよう! どうしよう! 言うつもりは無かったのに! 妹として傍にいようって決めてたのに! 幾ら沙月ちゃんに煽られたからってあんな事言っちゃうなんて!「はぁ、はぁ……ここは?」 お兄ちゃんから逃げる事しか考えて無かったから、いつの間にか公園に辿り着いちゃった。 でも、ここまで来れば流石に見つかんないよね……。「はぁ……これからどうしよう」 ベンチに腰を下ろすと、つい言葉が漏れてしまった。「ビックリしてたなぁ……」 そりゃそうだよね。実の妹が異性として兄を好きだなんて思ってもみないだろうし。 はぁ……流石に嫌われちゃったよね……。「柚希! ハァハァ&h
『自分の気持に素直になってみたら?』 翌日になっても新島先輩の言葉が頭から離れない。 素直になっても報われないなら……もしかしたら気持ち悪い妹だと思われたらと考えてしまう。「ダメだなぁ……ネガティブな事しか浮かんでこない」 そう独りごちて、思考を振り払う様に頭を振る。それから大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてお兄ちゃんの部屋のドアをノックして中に入った。「どう? お兄ちゃん。少しは良くなった?」「ああ、熱も下がって倦怠感も無くなったよ」 そう言って腕をぐるぐる回す。 「良かった。でもあまり調子に乗らないように! 今日一日は安静にしててね」「大丈夫だって」「ダメでーす。風邪はひき始めと治りかけが一番重要なんだから」「母さんみたいな事言うな」「はいはい、なんとでも言いなさい。とにかく安静にしてるんだよ」「はぁ、分かったよ」 諦めたようにベッドに横になるお兄ちゃんを見届けて部屋を出た。 少し体調が良くなったからって直ぐ調子に乗るんだから。 でも、良くなってよかった。 リビングでテレビを見ながら勉強しているとインターホンが鳴った。 まさかまた新島先輩が来たのかな? と頭の隅で考えつつモニターを確認すると、今度は沙月ちゃんが立っていた。 玄関を開けると沙月ちゃんは元気良く挨拶してくる。「柚希ちゃんやっほ~」「やっほー。もしかしてお兄ちゃんのお見舞い?」「うん。急だったけど大丈夫かな?」「大丈夫だよ。体調も良くなってきてるし」「よかった~」 家に招き入れお兄ちゃんの部屋まで案内する間、疑問に思った事を聞いてみる。「そういえば、どうしてお兄ちゃんが体調崩したって知ったの? 心配掛けない様に黙ってたのに」「昨日南さんから聞いたんだ~。南さんは楓さんから聞いたって言ってた」「そうだ
水瀬先輩の想いを聞いてから数週間が経った。 当初懸念していた接し方や態度も以前と変わらず、普段どおり接してきてくれるとお兄ちゃんから聞いた。 それに一番驚いたのは水瀬先輩が合コンにハマった事だ。 沙月ちゃんに無理矢理連れて行かれた合コンで、チヤホヤされたのが嬉しかったらしい。 合コンの度に「やっぱりトモより良い男いないや」とボヤいていたので、今でもお兄ちゃんの事は好きなんだと思う。 だけど水瀬先輩はお兄ちゃんにはそんな素振りを一切見せていないらしい。 多分それはお兄ちゃんが好きで、幸せを願っているからこそなんだと思う。 沙月ちゃんのお陰で水瀬先輩は気持ちの整理が出来たのは嬉しい反面、合コンにハマってしまっている事に関してはお兄ちゃんも心配していた。「沙月には感謝だけど、他にやりようはなかったのかなぁ」 とお兄ちゃんがボヤいていた。 まぁ自分の事を好きで居てくれた女の子がいきなり合コンにハマりだしたのだから複雑な気持ちなのだろう。 お兄ちゃんだけでなくグループの人達全員が水瀬先輩の変わりように戸惑っていたみたいだ。 それも最初の内だけで、今では水瀬先輩=合コンというキャラが定着しつつあるらしい。 実際私も何度か誘われたが丁重に断った。 そんな出来事がありながら中間試験も終了し試験休みに入ったのだが、休みに入った途端、お兄ちゃんが熱を出して倒れた。 そして今は看病の真っ最中だ。「もう、お兄ちゃんは無理し過ぎだよ」「ゴホッゴホッ! すまん……」 どうしてこうなったかというと、文化祭のライブが切っ掛けだった。 振替休日が終わり学校へ行くと、1年から3年まで分け隔てなく女子から猛アプローチを受けていた。 授業が終わり帰宅する時には、校門に他校の女子が出待ちまでしてたし。 アプローチされても軽く流せばいいのにお兄ちゃんは一人ひとり丁寧に対応し、睡眠時間をへらしてまでファン達の相手をしていた。 気持ちを無下にできないっていうお兄ちゃんらしい優しさではあったけ
昨日は凄い一日だったなぁ。 お兄ちゃんが水瀬先輩を振るシーンを見ちゃったり、その後参加した打ち上げの後での新島先輩とお兄ちゃんのやり取りを聞いたり。 新島先輩がなんで私にまで話を聞かせたかは未だに分からないけど、問題は水瀬先輩なんだよなぁ。 もしこれで水瀬先輩がお兄ちゃんから離れていってしまったら絶対お兄ちゃんのグループの雰囲気は悪くなる。そうなると中居先輩が黙ってないだろうし……。「それに……お兄ちゃんの好きな子ってやっぱり――」 試験勉強をしていたがどうしてもその事が頭に浮かんでしまう。 残る候補は沙月ちゃんだけだからほぼ確定なんだろうけど……沙月ちゃんはお兄ちゃんのことどう思ってるんだろう。 私のことを応援すると言ってくれてたけど、私の事を理由に断って欲しくない。 例えお兄ちゃんが沙月ちゃんと付き合ったとしても、私はお兄ちゃんの妹だし、これまで通り傍に居られるだけでいい。 そんな事を考えているとスマホの通知音が鳴った。 スマホを手に取り確認する。「水瀬先輩からだ……」 アプリを開いてメッセージを確認する。〈大切な話があるから今から話せないかな?〉 大切な話ってなんだろう? それよりも気持ちの整理はついたのかな。 とりあえず返信しないと。 〈大丈夫ですよ〉 〈ありがと。沙月ちゃんにも話すから今グループ作るね〉 わざわざ3人だけのグループを作って話すことってなんだろう? そう考えている内にグループへの招待が来たので参加する。 沙月ちゃんも参加して全員揃ったところで通話が掛かってきた。「もしもし、こんにちは」「南さんこんにちは~」「2人ともこんちはー。急にごめんね~」「いえいえ、大丈夫ですよ」「はい、丁度暇してたので問題ないです」 話し方や声のトーンはいつもと変わらない。
新島先輩に続いて水瀬先輩までフラれた。 そうなるとお兄ちゃんの好きな女性は必然的に沙月ちゃんって事になる。 沙月ちゃんには今まで色々相談に乗って貰ったり、私の唯一の理解者でもあった。 だからこそ私が沙月ちゃんを祝福してあげないと。「待たせて悪いな」「ひゃっ!」 考え事をしていたらいつの間にかお兄ちゃんが校門にやってきていた。 ビックリして変な声出ちゃったけど不審に思われないよね?「なんだよその反応は。ちょっと傷ついたぞ?」「ご、ごめん。ちょっと考え事してたからお兄ちゃんに気づかなくて」「まぁ遅くなった俺が文句言えないか。んじゃ行くか」「……う、うん」 水瀬先輩はどうしたの? という言葉を飲み込んだ。 私があの現場を見ていたと知ったら色々気まずいだろうし、何より水瀬先輩の事を思うと私が見てたという事実は無かった事にした方がいい。「文化祭は楽しかったか?」「楽しかったよ。特にお兄ちゃんのライブは興奮したなぁ~」「その話はやめてくれ。皆褒め過ぎなんだよなぁ」「とか言ってお客さんを凄い煽ってたりしてたじゃん」「あ、あれはああやれって言われたから仕方なくだよ」「それにちゃっかりクラスの宣伝までしちゃって~」「うぅ、あれは……もうなんとでも言え!」「あはは、ごめんごめん」 お兄ちゃんを揶揄っていると打ち上げ会場に着いた。 入店すると沙月ちゃんが出迎えてくれた。「柚希ちゃんいらっしゃ~い」「おじゃましま~す」 沙月ちゃんと軽いハイタッチをしながら挨拶を交わす。「あ、友也さん遅いじゃないですか~」「掃除当番だったから皆には先に行ってて貰ったんだ」「そうだったんですね。じゃあ早く着替えてきてください、忙しいんですから」「ああ、わか……って今日は客で来てんだよ」「え? 手伝ってくれ







